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空気は汚染物質?

Jarrod Potteiger (Noria Corporation)

 潤滑システムの汚染といえば、粒子と水分に注目することが多い。実際には、そのほかにも制御しなければならない多くの汚染物質が存在する。ほとんどの汚染物質は、潤滑剤には含まれていないものであり、オイルを劣化させたり潤滑部に損傷を与えたりする。空気は常に潤滑油中に存在するとはいえ、混入する空気量を最小にする手段をとるのが好ましい場合が多い。

 油中の空気の状態は、溶解、混入(エントレイン)、泡(フォーム)の3通りがある。オイルに溶けた空気は、個々の分子として存在し、ソーダ水に溶けた炭酸に似ている。このタイプの空気は肉眼では見えず、検出できない。オイル中の混入空気は、オイルに懸濁した小さな気泡からできている。おそらくこのタイプの空気汚染が最も有害な存在で、濁った外観をしたオイルで見分けがつく。濁ったオイルの一般的な原因はいくつかあるが、オイルサンプルを採取して、時間の経過とともに澄んでくるかどうか観察することで見極められる。

 もし濁りが水分、あるいは他の液状汚染物質によるものであれば、サンプルが透明になると水層ないし液体の層ができるはずである。泡は、油中の空気汚染でも頻繁にみられる。泡とは、一般にリザーバの表面に溜まる比較的大きな気泡の安定層をいう。システムによっては表面の泡が大きな損傷を与えないこともあるが、通常、泡層の存在は、相当量の空気が含まれていることを示している。

 

過剰な空気汚染の原因

 過剰な空気汚染を引き起こすには、かなり多くの条件があり、そのため考慮しなければならない一般的原因がいくつかある。最もよく見られる原因は水分汚染である。潤滑油が水分で汚染されると表面張力が低下し、オイル中の気泡はより小さな粒子に分かれて簡単に懸濁する。溶剤や多くの化学汚染物質、さらにはオイルの酸化による副生成物など、他の多くの汚染物質も同様の影響を与える。酸化副生成物は、時間経過とともに泡の主原因になる。

 他の原因には、あわ消し剤の消耗、サクション部の漏れ、リザーバ設計の不具合、不適切な粘度のオイル使用、あわ消し剤の使い過ぎなどがある。また、あわ消し剤が異常に不足する場合もある。こうした状態では、ユーザーがシステムに脱泡剤を加える必要が生じるので、反対に過剰添加の機会になったりする。オイルに添加剤を再添加するときは注意して、適切に実施しなければならない。

 

空気汚染の影響

 空気汚染は、機械と潤滑剤の両者にマイナスの影響を与える。空気は潤滑油に対し、酸化および熱分解速度の増加、添加剤の消耗、熱伝導係数の低下や油膜強度の低下を起こし、機械に損傷を与える。オイル分子が酸素と接触するとオイルは酸化劣化する。オイルから出る酸素が多くなるほどオイルの酸化が早くなるのは当然である。体積変化が急激な温度上昇を引き起こす高圧環境に気泡が入り込むような場合は、この問題はより重大である。この工程は、マイクロディーゼリングと呼ばれることもあり、オイルの熱分解の原因にもなる。

 空気汚染によって起きる機械の摩耗には、いくつかの機構がある。ひとつは、空気の圧縮性である。オイルが適切な潤滑膜厚をつくるためには非圧縮性でなければならない。オイルに多量の混入空気が含まれていると、そのオイルがつくる膜の強度が低下して膜が壊れ、相互作用下にある表面間に機械的摩擦が生じる。機械の種類によって、この影響は早く出ることがある。

 油圧ポンプのように急激な圧力変化が生じる機械では、急激で瞬間的な体積変化によって気泡が急速に破裂し、その結果機械表面に浸食(エロージョン)が生じる。油圧機器では、混入空気は他の問題、たとえば作動液の非圧縮性が損なわれることによるバルブの作動不良や、制御不全、表面のデポジット生成などが起きる可能性が増える。

 

空気汚染の検出と制御

 突然リザーバに泡の問題が起きたなら、調査すべき要因がいくつかある。まず、ドレンからオイルサンプルを採って自由水の存在をチェックする。もし実際に水分が犯人であれば、泡の発生によって水の問題があることが判明したことになる。ひどい水分汚染が見られないなら、分析用にオイルサンプルを採取して化学物質による汚染を調べ、間違ったオイルを添加していないか、オイルが劣化していないかをみる。突発的に起きる問題でよく見られる原因として、循環システムにおけるサクション漏れがある。この種の問題は、昔からあるシェービングクリーム法で検出できる場合がよくある。

 これまでにもシステムが泡問題を起こしていたなら、汚染の問題が進行中であるか、システム設計に問題がある可能性がある。泡が出るリザーバに共通している問題に、極めて小型の油槽を使っているため,オイルのリターンラインがオイルレベル面上で終わってしまい混合を起こしたり、サクションラインとリターンラインが非常に近くなっていることがある。こうした問題はデヒューザを使ったりバッフルを取り付けたり、静置することで泡を分離し易くするシステムではプレートあるいはメッシュスクリーンを使って、対策可能な場合がある。

 

 先述したように、潤滑系から空気を完全に追い出すことは不可能だろうが、考えられるだけの対策をとって可能な限り空気を減らす必要がある。余分な空気を取り除けばオイルの寿命は延び、システムの性能が向上し、摩耗や沈着物が減少する。汚染制御とはただろ過をしてゴミをとるだけではない。システムから異物を取り除くことが、汚染制御の意味なのだ。

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