試料油への汚染の影響を最小限にするため、また、設備を循環している油の清浄度を代表する試料油が採取できるように、ISO4021(JIS B 9936)「運転中のシステム管路からの作動油試料採取方法」で試料採取方法(サンプリング)を定めています。この採取法では、管路用サンプラーを利用した管路からの採取を推奨しています(図1)。
管路用サンプラーが利用できない場合の代替方法として、試料油への汚染に十分注意しながら油タンク用サンプラーによる油タンクからの油の吸引採取法を推奨しています(図2)。ただし、油タンクからの採取法では、管路からの採油に比べ、清浄度の代表値としては劣ります。
管路用サンプラーは、配管の上部に細管を設置します(図1)。細管の先には小型ボール弁を取り付けます。ボール弁を使用する理由は、油路が円筒で単純な構造のため、弁内の汚染物を短時間で洗い流せ、試料油の汚染を少なくできるからです。ボール弁の先には細管を取り付けます。採取箇所の圧力と採取油の粘度によって、細管の太さと長さを変えます。圧力が高く粘度が低いほど細く長い細管を取り付けます。管路の圧力を細管で生ずる圧力損失で減らし、採取しやすい流量にして、試料油を採取できます。
図1には、ボール弁の前にクイック継手を設置しています。ボール弁を含む採取配管の着脱が可能になります。採取配管を取り外したときには、クイック継手にはダストキャップを取り付
細管の太さと長さは、計算によって概算値を求めることができます。ハーゲン・ポアズイユの式を用いると、円管内を流体が流れるときに生ずる圧力損失は、次の式で表されます。
ここで、Δpは圧力損失、μは粘度、Lは円管の長さ、Qは流量、dは円管の内径、πは円周率(約3.14)です。サンプル油の採取しやすさを考え、200mL程度の容量のサンプル瓶に5秒間で150mLの試料油を採取すると仮定し、鉱油の密度を900kg/cm3、動粘度を32mm2/sとしてΔp(MPa)、L(mm)、d(mm)の関係を求めると、L = 28.4 d4 Δpとなり、グラフで表すと図のようになります。細管の長さLは粘度μや流量Qに反比例するので、粘度が2倍のときは、長さが半分になり、流量を半分にしたい場合、長さを2倍にします。