配管や機器に設置するサンプリングポート(オス)は、ゲージポートやテストポイントなどに使用されているもので、油のサンプリングにも活用できます(図3、4)。
配管内の壁面を避け、流れの中央から採取する方法として、ピトー管付サンプリングポート(図5)も便利です。配管のエルボー部に取り付けて使用します。
サンプリングポートには、チェックバルブが内蔵されています。サンプリング時には、このポートに対応するメスのポートの付いたサンプリングチューブを使用して油を採取します(図6)。フィルターヘッドも流れは十分乱れているため、サンプリングには適しています(図7)。
油タンクからの試料油の採取で、ブリーザーポートや給油用蓋から採取できない場合、図8に示すような油タンク側面のポートやドレンポートにピトー管付ミニメスサンプリングポート(図3)を設置することによって、汚染の少ない試料油採取が可能です。この方法で、油タンク壁面の汚染や底に沈殿した汚染異物による試料油の汚染を防止できます。
試料採取には、図9に示すハンド真空ポンプが必要になります。試料油をサンプル瓶に採取する前に、サンプル瓶1~2本分のサンプリングポートのフラッシングを行ってください。フラッシング後、清浄なサンプル瓶とクイック継手付チューブ(図4)に取り替えてサンプリングを行ってください。
サンプル瓶は、常に清浄でなければなりません。清浄なサンプル瓶とは、システムから採取する試料油の清浄度に比べて十分清浄な容器のことです。一般的に、試料油中の汚染粒子の数の1割以下であれば、試料油の分析に大きな影響を与えません。例えば、洗浄した100mLのサンプル瓶に6μm(c)超の粒子が100個/mL含まれていたとき、100mLのサンプル瓶の清浄度は、10,000個/100mLとなります。ISO清浄度コードで記すと、6μm(c)超のレンジ数は14(-/14/-)となります。このサンプル瓶で正確な分析が可能な清浄度は100,000/100mL、ISO清浄度コードで表すとレンジ数が17(-/17/-)までとなります。
サンプル瓶の清浄度は、目標の清浄度管理基準値や、採取する試料油中に含まれる予想粒子数の10%程度に設定します。10%程度であれば、サンプル瓶の清浄度が試料油に与える影響は無視できます。
また、サンプル瓶は試料油に溶解や膨潤のない、化学的に適合性のある材料を選択してください。また、瓶の外から試料油を観察できるような透明なサンプル瓶が望ましく、中栓なしでも漏れない構造のサンプル瓶を選択してください。中栓は、汚染の発生源となり、試料油が清浄なほど測定清浄度に影響を与えます。
サンプル瓶の清浄度によってクリーン、スーパークリーン、ウルトラクリーンなどと分類して表すことがあります。それぞれの清浄度の基準は10μm超の粒子に関して以下のように設定しています。
このような清浄度の容量100mLのサンプル瓶中に含まれる粒子の数とISO清浄度コード(目安)は以下のようになります。
サンプル瓶の清浄度が試料油の10%程度とすると、スケール番号で少なくとも3レベル以上のISO清浄度コードの試料油に使用できることになります。例えば、スーパークリーンサンプル瓶はISO 18/15/12よりも汚れた試料油に使用可能で、これより清浄な試料油の分析には適さないことになります。
作動油や潤滑油の汚染分析の精度が、サンプル瓶の清浄度不足によって損なわれないように、サンプル瓶の品質を管理しなければなりません。JIS B 9937/ISO 3722(作動油試料容器-清浄度の品質及び管理方法)では、その方法を規定しています。
対象粒径以上の粒子に関して、サンプル瓶の容量100mL当たりに含まれる粒子の数の許容最大数、すなわち、要求清浄度(RCL)を定め、RCLを満足するサンプル瓶の洗浄方法の確立とサンプル瓶の品質管理方法を定めます。RCLは、予想される測定値の10%以下に設定しなければなりません。